かつて、音よりも文字の方が速かった。
といっても植草甚一の頃の話じゃなくて10年くらい前だってそんな状況だった。例えば雑誌で気になる音楽を見つけると
youtubeを探す→文京区図書館のデータベースを調べる→ジャニス・スモールミュージックの棚→海外のアップロードサイト巡回→ディスクユニオンの中古商品在庫データベース→タワレコ・HMV・amazon→(初めに戻る)…
学生でお金がなかった故の手間もあったかもしれないが、本で読んで音を聞くまでにそれだけの手間があった。少しでも文字の速さに追いつくためにCDプレイヤーを持ち歩き、買えたらすぐに袋をやぶって電車で聴くこともあった。
今考えるとその速さのために文字にお金を払っていた側面は大いにあったと思う。ディスクガイドを買ってもすぐには聴けないもどかしさとその間に膨らむ想像。しかし今じゃ読んで5秒後にはほとんどのものがApple Musicで聴けてしまう。なんならレコードの棚を漁りながら一応検索して中身を聴いてしまうこともある(これはルール違反かもしれません)。ディスクレビューは速さという価値を失い、ただ音を補強する役割に堕落してしまった。聴けるものしか載ってない素人の年間ベストに何の価値があるのでしょう…
しかし、ここに今この日本で唯一音よりも速い冊子が生まれた。この冊子に書かれている情報は今まで書籍にもなっていない、ネットにも載っていない。ここに書かれたCDは聴きたくてもすぐにネットで聴くことはできない。Amazonで1円で売っていなければ足を使って探すしかない。ディスクユニオンのセールのメルマガにも載っていない(値段がつかないので)。地方の渋谷系レコード店から通販で取り寄せることもできない(値段がつかないので)。
この冊子を手に入れれば都市生活を楽しむことができる。音楽に辿り着くまで地獄まで散歩してその時間を楽しむことができる。
4/21@京都メトロ、Yu-Koh @ver.に来場してぜひ手に取っていただきたい。
↓ 台車さんによる巻頭の犯行声明を読んでください!