sute_acaさんへの事前質問 

sute_acaさんへの事前質問 

①LVのカタログの中でアートワークがアーティスト側が持ち込みのものってどれですか?

持ち込みは、

Mellow Blush「Camera Obscura」

SNJO「未​開​の​惑​星」

wai wai music resort「WWMR 1」「パシフィック温泉」

松木美定「主観」

Yawning Mondo Qube「Yawning Mondo Qube」

ちぷざ「MOGURA」

です。持ち込みとは言っても完全に関わっていないわけではなく、すべてのアートワークになんらかの形で関わっています。

たとえば「アートワークはどんなイメージにすればいいのか想像が付かない」場合だと、具体的に自分の中でマッチしそうな作家さんをご紹介したり、助言や意見やアドバイスをしています。基本的には、アルバムの内容やアートワークについては基本的にあれやこれや口を出したりしたくないですし、アーティストの皆さんの意見を尊重して仕上げています。一方で、アーティストの皆さんもレーベルの意向を汲んでアートワークを決めてくれているようにも思えます。本当にありがたいことです。「Local Visionsのアートワークは良い」というご意見をいただくこともあるんですが、アーティストとレーベル、お互いがお互いに思いやりを持って取り組んだ結果だと思っているのでとても誇らしく思います。

②好きなレーベル、いろいろあると思うのですが自身もレーベルを運営されている中で、姿勢として共感しているレーベルがあれば教えてください。

レーベルや、そのレーベルが手掛けたコンピレーションアルバムは、単にアーティストや楽曲が意味もなく羅列されているだけでは意味を成さないと思っています。これは個人的な感覚に過ぎないかもしれませんが、並びに美学(関連性や意外性など)が感じられることは大切だと思っていて、そういう美学が香っているレーベルが大好きです。そういった感覚で言うと、価値観的に近いのはDJかもしれません。好きなレーベルですが、具体的には〈RVNG Intl.〉〈Orange Milk Records〉など。また、世の中の情勢に対して何らかのアクションを示していることも大切だと思います。

 

③レーベルオーナーが音楽家というパターンも多いと思うのですが、LVはそうではない。そのあたり何か思うことあれば、というか他のレーベルの例なども訊きたいです。(Vaporwave周りでもレーベルやってる人が自分でも作品出してるイメージがあるのですがどうでしょう)

音楽のプレイヤーではない人間が、レーベルの中心人物になっているという事例はあまり見かけないような気がします。僕の場合は、Vaporwaveのカセットテープシーンの影響を受けています。Vaporwaveシーンにおいてはカセットテープの人気が高く、音楽のプレイヤーではない、カセットの愛好家という「ファン」の人たちが、理想のカセットを作るために自分でカセットレーベルを立ち上げるという流れが2015年ごろから存在していました。Vaporwaveカセットという特殊な文化圏で音楽的な体験を重ねてきて、その流れでレーベルを立ち上げた身としては、非プレイヤーの立場である自分がレーベルの中心人物であるという状況に違和感はないと思っています。


⑥Vaporwave以前に好きだった音楽はなんですか?(あまりロック好きという感じもしないし普通にノイズ聴いてた...とかですかね)

Vaporwave以前、というかめちゃくちゃ掘り下げて音楽遍歴で書いてみます。

・幼少期: 父親が当時ハマっていた音楽を聴かされていました。車で外出するときに車内でかかっていた90年代のテクノ(Aphex Twin、µ-Ziq、808 State)が印象的でした。電気グルーヴと車窓に流れる河川敷の風景を今でも覚えています。父親は特にYMOが好きで、僕も「東風」が好きだった記憶もあります。たまを聴かされてた記憶もあります。父親のCDの棚には小川美潮やチャクラ、ヤプーズ、Psy . S、きどりっこ等が並んでいて当時は関心は無かったですが今なら分かりみあるな〜という感じです。

小学生に上がった頃に、ニンテンドー64と「パイロットウイングス」というゲームソフトを買ってもらったのですが、そのBGMで流れていたファンクやスムースジャズニューエイジっぽいサウンドがヴェイパーウェイヴの原体験だと思います。

あとヤマハのエレクトーン教室に通っていました。その経験は全く活かされなかったです。

・小学生〜中学生時代: 上記の父親の影響をとくに受けるわけでもなく、音楽にはあまり関心を持たなかった時期でした。当時の親友だった斉藤くんが聴いていたスキマスイッチ木村カエラを借りたりしていました。音楽への関心はほとんど無かったんですが、その代わりにCDのパッケージやデザインに関心を持ち始めました。いろんなミュージシャンのCDのパッケージを見るために、音楽は聴かずにディスコグラフィーページだけを見たり。当時は美術部に在籍していて、副部長をやりながら架空のコンピのジャケットや存在しない曲を妄想してスケッチしていました。このあたりの体験がレーベル活動に繋がっていったと思います。

・高校生: 暇な時間を持て余していたので家にあったパソコンでいろいろな音楽を聴いていました。最初は2ちゃんねる系の音楽まとめを参考に、ロックやジャズ、クラシックなどポピュラーなジャンルへの理解を深めていました。やがてそれだけでは飽きてしまって、海外の音楽ブログに手を伸ばして、当時の精度が低かったGoogle翻訳を駆使して読んでいました。受験生になるまでの2年くらいの間は、帰宅したらまず音楽をディグって聴くみたいな孤独な時間を過ごしていました。検索すれば出てくるだいたいのジャンルは聴いたかもしれません。特にエレクトロニカアンビエントが好きで、そこから高校3年生くらいの時期に実験的なノイズミュージックやドローンに傾倒していきました。

・医療系の学校: William BasinskiやThe Caretaker、Tim Heckerなどが大好きでした。暗いシンセ音楽最高だな〜という時期にOneohtrix Point NeverやJames Ferraroのことを知ったと思います。Vaporwaveに関しては完全に後追いですが、当時は「パイロットウイングスのBGMのやつじゃん!それをノイズの人たちがやってるのおもしれ〜」と思いながらも、あまりハマらなかった記憶があります。ハマったきっかけは、京都のメディテーションズというレコード屋さんで買ったdeath's dynamic shroud.wmvの「世界大戦OLYMPICS」というカセットテープだったと思います。そこからカセットテープをちょこちょこ集め始めました。初めてデザインも音楽も好きだと思えるものに出会えたと感動したのを覚えています。

・社会人: 捨てアカという人格を作る。Local Visionsを立ち上げる。今に至る。

 

 

⑦LVの案件系ってOACLと、ディスクユニオン蛍の光?とあと他になにかありましたっけ

案件系は、ディスクユニオン蛍の光だけです。レコードに関しても制作の依頼があって引き受けたものだけです。OACLは案件というより、自然発生的なものだと思います。「一緒に面白いことやりましょう」からの、本当に面白いことをやったみたいな感じです。



(11月中に来ていた質問箱。質問はまだ受付中です!)

■リリースするアーティストの基準

 

僕が好きかどうかだけですね。好きだからリリースしています。あと、基準という訳ではないですが、安直じゃない、素直じゃない、良い意味でひねくれていることかなあ。基本的に「こういう表現をやりたい」っていう真っ直ぐな思いを持ってスタートすると思うんですが、真っ直ぐに進むことを選ばない人たちがいたとして、あえてすごく遠回りをして変なところに行き着いてしまう、そういう人たちが好きです。Twitterのプロフィールは必ず見ています。いいね欄から相互フォロー、1年前のツイートまで遡ってどんな人物なのか確認します。これは人格的に難があるからリリースに影響するというわけではなく、どういう人物なのか僕がめちゃくちゃ興味があるというだけです。

 

 

■Local Visionsをどんなレーベルと捉えているか

 

やんわりと「Post-Vaporwave以降のポップミュージックレーベル」というのを標榜にしています。とは言ってもジャンルに固着してそういうものばかり取り扱うのではなく、もっと広く広範なものに目を向けていきたいと思っています。Local Visionsのイベントの客層は、いわゆるダンスミュージックをメインにしたクラブ的な立ち位置でもなく、かといってバンドやアコースティック1本で弾き語るSSWのようなライブハウス的な感じでもなく、謎の人たちが集まっているという感想をよく耳にします。そういった人たちを取りこぼしたくないですし、そういった人たちに向けてやっている気持ちもあります。

 

 

■Local Visionsのビジョン

 

短期的だと、来年はイベントを充実した年にしたい。2019年ごろの活発な雰囲気を取り戻していきたいです。つい先日ですが、Local VisionsをTsudio Studioさんとの共同主催にするというお知らせを出しました。急に決まったことではなく、お互いにずっと考えてきたことが形になったということです。たまたまTsudio Studioさんと通話で話している際に、彼も同じ気持ちだと知りました。Local Visionsをきっかけに、関西のミュージシャンや音楽関係者に関わらず様々な人たちのゆるい繋がりが生まれたなと感じていて、それが拡大していってコミュニティになって、そこから新しい何かが生まれると良いなと思っていました。「Local Visionsをコミュニティとして捉えたときに、それを長期的に維持して行きたい」という思いが合致して、「それなら一緒にやっちゃいます?」という感じで決定しました。ツジオさんも同じ気持ちで同じ方向を向いていたんだと思います。ツジオさんが運営に加わったことで、これからますますLocal Visionsの活動を盛り上げていきたいと思っています。島根に住んでいて一人で運営している状態ではできなかったこと、僕の仕事や私生活を優先する一方で諦めるしかなかったこと、そういったことが出来るようになってくるはずです。

あと、めちゃくちゃダサいことを言っていいですか。

カタログナンバー「LV-100」でレーベルを閉鎖するつもりでそれを大々的に言っていたと思います。あれを撤回したいです!