死票 50年のジャズ・アルバム・ベスト 100リスト

ミュージックマガジン誌の1969年以降のジャズベスト100企画に寄稿しました。
個人リスト見づらかったそうなのでこちらに載せます。

1 Lee Konitz, Gil Evans Heroes
2 Anthony Braxton New York, Fall 1974
3 Miles Davis Big Fun
4 Miles Davis Miles at the Fillmore – Miles Davis 1970: The Bootleg Series Vol. 3
5 The Ganelin Trio 15 Year Reunion (Live At The Frankfurt Book Fair)
6 Cassiber Beauty & The Beast
7 Computer Soup Toizarasi
8 The Thing Live At Bla
9 Art Ensemble Of Chicago Les Stances A Sophie
10 Blossom Dearie From The Meticulous To The Sublime
11 Cecil Taylor Dark To Themselves
12 John Zorn Cobra (Studio)1991
13 John Zorn News for Lulu
14 Masada Live In Taipei
15 Charles Mingus Mingus At Carnegie Hall (1974)
16 Romano, Sclavis, Texier, Le Querrec Carnet De Routes
17 Steve Coleman's Natal Eclipse Morphogenesis
18 Steve Lacy Four Morning Joy
19 Sun Ra Lanquidity
20 高木元輝+加古隆 パリ日本館コンサート
21 The Cannonball Adderley Quintet Pyramid
22 Gil Evans Live At The Public Theater New York 1980
23 Kenny Wheeler Around 6
24 The Heavyweights Yatagarasu
25 編集盤 Wildflowers: The New York Loft Jazz Sessions
26 沖至 しらさぎ
27 今井和雄トリオ Blood
28 Keith Jarrett Eyes of the Heart
29 Josef Leimberg Astral Progressions
30 John Lewis J.S. Bach Preludes And Fugues From The Well-Tempered Clavier Book 1

 

ちなみに編集部に提出したリストは↓になります。

順位 アーティスト名 アルバム名 備考
1 Lee Konitz, Gil Evans Heroes  
2 Anthony Braxton For Alto ※ほかのアルバムでも可
3 Miles Davis Big Fun  
4 Miles Davis Miles at the Fillmore – Miles Davis 1970: The Bootleg Series Vol. 3  
5 The Ganelin Trio 15 Year Reunion (Live At The Frankfurt Book Fair) ※ほかのアルバムでも可
6 Cassiber Beauty & The Beast ※ほかのアルバムでも可
7 Computer Soup Toizarasi ※ほかのアルバムでも可
8 The Thing Live At Bla ※ほかのアルバムでも可
9 Art Ensemble Of Chicago Les Stances A Sophie  
10 Blossom Dearie From The Meticulous To The Sublime  
11 Cecil Taylor Live in Vienna
Cecil Taylorのアルバムで、サックス奏者が入っているライブ盤ならほかのアルバムでも可
12 John Zorn Cobra (Studio)1991 Cobra (LIVE)でも可
13 John Zorn News for Lulu  
14 Masada Live In Taipei ※ほかのアルバムでも可
15 Charles Mingus Mingus At Carnegie Hall (1974)  
16 Romano, Sclavis, Texier, Le Querrec Carnet De Routes  
17 Steve Coleman's Natal Eclipse Morphogenesis ※ほかのSteve Colemanのアルバムでも可
18 Steve Lacy Four Morning Joy  
19 Sun Ra Lanquidity  
20 高木元輝+加古隆 パリ日本館コンサート  
21 The Cannonball Adderley Quintet Pyramid  
22 Gil Evans Live At The Public Theater New York 1980 ※ほかのライブアルバムでも可
23 Kenny Wheeler Around 6  
24 The Heavyweights Yatagarasu ※ほかのPeter Brötzmanのアルバムでも可
25 編集盤 Wildflowers: The New York Loft Jazz Sessions  
26 沖至 しらさぎ ※ほかのアルバムでも可
27 今井和雄トリオ Blood  
28 Keith Jarrett Eyes of the Heart  
29 Josef Leimberg Astral Progressions  
30 John Lewis J.S. Bach Preludes And Fugues From The Well-Tempered Clavier Book 1  

 

実は私が挙げたアルバムは全体の100位に一つも入っていません。もちろんわざと外して選んだものもありますが、少しは入ってると思った(恥ずかしい)。

 

ミュージックマガジンのベスト企画、ブラジル編に続いて2回目の参加ですが、

 

・一部アーティストについては、アルバムごとに票が割れて順位が上がらないことも予想されます。選者の方が希望される場合に限り、「同じアーティストの票数が多いほかの作品(あるいは指定の別の作品)での代替」をご指定いただくことも可能です。なお、その場合は別掲の個人リストも投票に集計した作品に差し替えさせていただきます。

 

というルールが追加されたため、アンソニーラクストンとセシルテイラーのアルバムが差し替えになり、レビューを書かせてもらえました。本当に全て死票にするところでした。

 

編集部からの依頼には

・歴史的重要性という観点よりは、「個人的な愛聴盤」「音楽作品としての評価」を基準にお選びください。また、今後への展望がテーマのひとつでもあるので、「現在の視点から見た評価」も考慮していただけますと幸いです。

とあったのですが、どうせロバートグラスパー1位!とかになるんでしょ?とか思ってしまってフリージャズばかり選ぶよう自分に間違った圧をかけてしまいました。他の人は個人的な愛聴盤を書いていてバランスもよく、宗教戦争やってる人はほとんどいなかったですね…

自分の中のルールとしては
・フリージャズを脱神秘化しつつ称揚する(それが今の若者に足りていないので)
・ジャズかどうかの線引きは厳密に考える。(フリーインプロは入れない)
・自分が付け加える意見を持ってるかどうかで選ぶ(私はライターではないので何についても書けるわけではない)
・69年以前のほうが良いものは入れない
 
以下選んだものについて少し書きます。

1.Lee Konitz, Gil Evans - Heroes

 

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このアルバムについてリーコニッツ自伝では「ジョージラッセル含めてアレンジャーの弾くピアノは面白くない」の一言で片づけられていますが、アレンジャーが弾くピアノを剥き出しで聴けるアルバムは実際貴重で、現代のアレンジャーの人たちもこれをリファレンスに自身で楽器を弾くアルバム作っていってほしい。装飾ではなくアイデアを足していくピアノとサックスで勇気が出る。
 
3.Miles Davis Big Fun
マイルスデイビスのアルバムは全部好きなのは前提で、さらに自分が書かせてもらえることはないだろうという計算をしつつライブとスタジオ1枚ずつ選びました(全部好きなのでアガルタとスターピープル、とかでも良い)。Big Funを選ぶ、これは仕草です。Big Fun収録の"Go Ahead John"、今ビート作っている人が摂取しやすいマイルスデイビスのトラックはこれでしょう。実際にこれが一番好きという人何人も知ってる。

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6 Cassiber - Beauty & The Beast
7 Computer Soup - Toizarasi
26 沖至 - しらさぎ
ラウンジリザーズ(ジャズじゃない)もキップハンラハン(チコフリーマン!ジャズですね)もポストパンクとして好きなだけで選ぶ発想が無かったのですが、テープループとシーケンサーを使ってる80年代初期テクノロジー+フリージャズということでCassiber入れました。70年代初期のテクノロジー+フリージャズは沖至か佐藤允彦。90年代後半のローテク+ジャズがcomputor soupで、2000年代前半は?エヴァンパーカーエレアコユニットとか菊地成孔クインテットライブダブとか?
思いつかなかったですが、同期とリアルタイム変調を今のテクノロジーで使いこなしているジャズあったら教えてください...
 
16 Romano, Sclavis, Texier, Le Querrec Carnet De Routes
Romano, Sclavis, Texierは私にとって小節変分割メロディはティポグラフィカよりもこっちだったということで。聴いたことない人は聴いてほしい。

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17 Steve Coleman's Natal Eclipse Morphogenesis
Steve Coleman's Natal Eclipse(2017)は最近よく聴いていたのですがドラムレスのMベースでめちゃくちゃかっこいい。スティーブコールマンが80年代のあのペラペラした音質とセットでのみ語られるのはもったいなくて、長く続けてくれて良かったという話。

21 Cannonball Adderley - Pyramid
キャノンボールアダレイのジョージデューク期は再評価されるでしょう...と思っていたらマーク・ド・クライヴ・ロウがインタビューで触れているらしい。と動画のコメント欄に書かれていることを天野さんに教えてもらいました。

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23 Kenny Wheeler Around 6
ケニーホィーラーの重要性とこれを入れることでフリーインプロを入れずにエヴァンパーカーの話ができるという利点がある。

9 Art Ensemble Of Chicago Les Stances A Sophie
これを入れることでIn the Fishtankとポストロックの話をできるという利点がある。
 
10 Blossom Dearie From The Meticulous To The Sublime
女性が自身でインディーレーベルを始めた例としてはポストパンクに先駆けていた。伝記読みたいです。
 
29 Josef Leimberg Astral Progressions
最近のジャズとビートメイカー周りの中ではこれが一番好きです。ゲストもいいけどトランペットもビートも好き。
関係ないけどテラスマーティンって自身のサックスの音好きじゃないんですかね。最近のオクターバー噛ましてサックス吹いている人たちから感じる痛み、いったいなんなんだろう。サキソフォビア(サックス四重奏ではなく)。ダブの快感よりも痛みを感じる。
 
 
私はオーネットは60年代のほうが好きなので入れなかったですが代わりにキースジャレットアメリカンカルテットでソプラノ吹いてるやつ入れました。
 
ジョンゾーンについてはまた今度書きます。
 
 
思い浮かんだけどあえて入れなかったものは
・ルディマハールやアクセルドナー周辺
・Ellery Eskelin with Andrea Parkins & Jim Black!(カバーもしたことあるけど、今一番叩かれそうだから)
・マッドリブが楽器演奏しているやつ(下手な生楽器演奏の断片でビートを形成する、いわゆる"かすジャズ"ムーブメントの発端として重要だが同じく今一番叩かれそうだから)
・グレッチェンパーラト(好きだけど自分が選んだら変でしょう)
などなど。くだらないですね
 

ところで友達のチャートはよく見たのですが、岡田拓郎氏のチャートはすごい。実は岡田君が選んでいる30枚中14枚が100位以内に選ばれている。特集の柳楽・村井対談で揶揄的に触れられているジャコパス1stもアッティカブルースもロニーリストンスミスも全部岡田君が入れている、が嫌な感じがしない!ソフトマシーン3rd?とか変化球のつもりかもしれないけどそれも入っている!
マライアも入ってれば完全に現在の価値観かつ岡田拓郎のチャートでしたね。この企画この結果に不満をお持ちの人が多いみたいだが岡田拓郎の音楽を聴けば、表面だけ見るのではなくそこからどういう養分を取れるかのほうがはるかに重要だということに気づくでしょう。
 
そんな岡田くんに誘ってもらって参加したSounth Penguinのインタビューも同じ号のミュージックマガジンに載っています。headという曲で私はギャーっと吹いているのですがこれは岡田くんに真っ先に編集で切られたところをアカツカくんに救出してもらったテイクなので、岡田くんのセンスでは決してありません。