hikaru yamada and metal casting jazz ensemble - moon 全曲解説

 

 

さくっといきます。

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以前から、アーサーラッセルのこの曲みたいにベースラインだけ先に決めてそのループに合わせて大人数でジャムセッションしたものを編集して曲にする、というのをやってみたいと思っていました。(実際この計画を何名かに話していたがその人たちは今回の録音には誘っていない...すみません。)

 

曲の骨格がなく、お互いに聴かないので反応し合わないアンサンブル、他にもマイルスデイビスのオンザコーナーとか(デイブリーブマンだけブースの外で演奏したとかしていないとか)

 

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フィルモアイーストのライブ盤とか(キースジャレットとチックコリアの2キーボード編成だが音量デカすぎてお互い何やってるか全く聴こえなかったらしい)

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ヴェルヴェッツの有名なヘロインもモーリンタッカーだけブースの外でしかもヘッドホンもモニターも無しで録音したらしくガタガタでかっこいい。(ライブ盤では普通に合い過ぎている)

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そういう訳で、個別に演奏してもらってそれを編集でアンサンブルにするという発想はコロナ影響によるリモートセッション的な文脈とは一切関係ないのですが、たまたまこういうタイミングになってしまいました。

 

本EPの制作過程に関するプレスリリースはこちらをご覧ください。

mikiki.tokyo.jp

ビートに合わせて12人のミュージシャンが個別に演奏してそれを編集した曲が4つ並んでいるという構成になっています。

 

 

 

1. some people call feat. kyooo

この曲はほとんど4曲目のmoon Ⅳ (piano trio) が骨組みになっているので聴き比べていただきたい。ビートに対して横に横に流れていくアプローチの阿部さん・落合さん・長澤さん。

冒頭の本藤美咲さんによるバリトンサックスのファンファーレは前述のアーサーラッセル曲イントロのピーターズモのトロンボーンへのオマージュですが、もちろんイントロ用に演奏してもらったわけではなく、アドリブの一部を切って2倍速にして貼ったものです。

歌詞は天野龍太郎さんが書いてくれています。(以前に誰か歌詞くださいと呟いたときに送ってくれたもの、を編集したら尺が足らなくなってしまったので同じ構成で私が2番?を書きました)。ありがとうございます。

kyoooさんの歌はiphoneで自分で録音してもらったのを整音して使っていますが全く問題なし!素晴らしい。kyoooさんのライブ観に行くと前の演者と同じものを使っているのに全く別のきらきらしたマイクに変わっちゃうんですよね...

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本EP、他の人のプレイはかなり編集されているのに本藤達朗さん(今後はLingua FranKaという名義で活動されるそうです。)だけ流麗なイメージをもたれるかもしれませんが(?)、実はトランペットのみ、ほぼ完成版のトラックに合わせて演奏してもらっています。この曲ではオープンでソロを吹いてもらっています。なぜかミックスでトラックと混じりが悪かったのですが、キックに合わせてわからない程度にサイドチェインコンプで拍頭を潰したらよい感じになりました。

井谷さんは平井庸一バンドで一緒になった時になんとなくこのプロジェクトの話をしたら興味を持ってくれました。パーカッションは自宅で録ってもらったものを使っています。ビブラフォンや左chでポコポコなってるエレクトリックパーカッションも井谷さんのプレイです。

私は一切演奏していませんが、00:46~で鳴るフィルターのかかったストリングスのみ打ち込んでいます。これは落合さんのピアノ聴いてたら頭の中で鳴った幻聴を再現しています。

 

2. moon Ⅱ (double time) 

この曲の土台は荒井さんのドラムです。他の人の録音を終えてなんとなくパワーの部分が足りないなと感じたので8年ぶり?に荒井さんに連絡して参加してもらったのですが、とにかくテンポを2倍で取って演奏してくれと頼んだ気がします。

ニカホヨシオさんはバンドSouth Penguinでキーボードを弾いているのですが以前私がサックスで参加したときに少し話して面白い人だなと感じたので今回お誘いしました。家に実機のフェンダーローズがあるとのこと。うらやましい。現在制作中のアルバムでもミニマルなフレーズをいろいろ使わせてもらっています。お楽しみに。

荒井さんのプレイでテンポが倍になったものの、それに合うベースが無い!ということでギターの平井さんがソロで弾いている速いフレーズをmidi化して2オクターブ下げ、うねうねしたベースとして使っています。中盤ではその上に平井さんの流麗なジャズギターが載るという。

本藤達朗さんのトランペット、この曲ではミュート付きで。キレのあるプレイでほんとに素晴らしい。

製作途中でこの曲、カマシワシントンみたいなスピリッチュアルジャズ風にしたいなと思って、落合さんに追加でオルガンを弾いてもらいました。さらにゴスペルコーラスのプラグイン(そんなのあるのか?)とか足していくかと考えたけどそれはやめた。

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本EP唯一私が演奏している曲ですが、相変わらずギャーギャーやっています。日本の最近のジャズ?にありがちなオルタナティブ観?には辟易していて、4曲目のピアノトリオみたいな一見普通そうで実はおかしい、みたいな音楽が私の一番やりたいことなのですが、わかりやすいオルタナティブ感も入れてあげるのが自分のていねいな部分であります。サックス、タメもなくいきなり逝ききっているプレイですが、このトラックに合わせて録ったわけではないのでこうなりました。途中の転調もあとで作った構成なので、サックスは合っておらずピッチダウンエフェクトをかけてごまかしている(4:21)。

サックス以外にもバスクラリネット(この後売却してしまった)、あとパットプレイス・スタイルのスライドギターも初めてやってみました。コントーションズは私にとってジェームスチャンスはどうでもよくてギター二人がかっこよすぎる。

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3. moon Ⅲ (perc and noise)

井谷さんのパーカッションが単体でもかっこよかったので、マイルスリスペクトでITANIというトラックを作ろうと途中まで考えていたのですが、そこに荒井さんの韓国伝統太鼓を改造したドラムキットと、本EP完成直前に送ってくれた大蔵さんのモジュラーシンセを合わせたら良かったのでこういった曲になりました。ちょっと付け焼刃感もあるのでアルバムでは他の人のプレイの中に混ぜて別の曲にしたいと考えています。

あとハイパーポップってなんじゃろな、と思いながら井谷さんのコンガに例の音割れエフェクトをかけています。(hirihiriさんの記事をパクって?松本昭彦氏が作ったプラグインAbleton M4L Another Dimension (.amxd file) (gumroad.com))

hirihiri.fanbox.cc

 

4. moon Ⅳ (piano trio)

このプロジェクトの発想が具現化した最初の演奏。

ドラムの長澤さんは以前soundcloudでライブラリアンズをフォローしてくれてから気になっていたのですが(シンセの人と路上演奏してる音源など)、ベースの阿部さんが録音当日別バンドのリハで一緒になるとのことで連れてきてくれました。ベースとドラムはモニターせず、お互いトラックのみを聴いて演奏しています。で、これを書いている時点でも二人とは未だに会っていない落合さんのピアノを重ねたらめちゃくちゃ良い!ことになって録音しながらみんなで驚きました。来年この3人を軸にライブもやってみたいと思っています。

あとこれは少しホラーなのですが、イントロの部分よく聞くとピアノの音に合わせてスネアの響き線が鳴っている気がするのはなぜですかね。ピアノ鳴らしていないのに...。そしてピアノはプラグインです(怖)

 

5.moon (beat)

本EPは全員がこのビートを聴いて演奏しています。元々10,10,10提供用に作った曲。微妙に拍子がわかりづらいように作っています。今まで私が作ってきた全てのビートと同様に、このビートは全て"moon"という単語が入った曲からのみサンプリングして作っています。(参考記事)

ソウルフル?なボーカルは加護亜依のジャズボーカルアルバムからのサンプリングです。

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以上。