即興演奏の(ライブを観に行く時の)楽しみ方について と2022年1月5日Ftarri 告知

即興演奏(イコールではありませんが、フリーインプロヴィゼーション)の集客、啓蒙、普及はどうやっていけばいいのか、という話題は定期的に見かけますが

個人的には文章による伝播しかないなと思っています。

 

私は演奏もしますが、フリーインプロヴィゼーションというジャンルのファンでライブもたまに観に行きます。その際の心構えは

 

①演者が舞台で即興でクリエイトするという行為を楽しむ 1割

②演奏者間の心理戦・ゲーム性を楽しむ 1割

③人の批評や感想に興奮し、それを確認しにいく 8割

という感じです。

 

③について、例えばライターの細田成嗣さんがサックスの松丸契さんについて書いたツイート

以下引用します

"東池袋KAKULULUにて、松丸契さんによるアルト・サックスを用いたソロ・インプロヴィゼーションを聴いてきた。周囲に解体されたドラムセットとシンバルを配置し、空間を意識しながら一息のフレーズを反復し変奏していく内容。時間軸に沿ったフレーズの変化と空間内で発生する音響現象が面白かった。 

·マルチフォニックスやマイクロトーンなど多彩な奏法を駆使し、柔らかな音色から攻撃的なノイズまで、あるいはサイン波のような持続音からテクニカルな素早いフレーズまで、あらゆる音響語彙を活用した、もはやジャンルとしてはカテゴライズ不能サキソフォン・ミュージックとしか言いようがない演奏。 

演奏する立ち位置や出音の種類によってシンバルやドラムセットが共振し、まるで物体がアンサンブルを奏でるかのように微かな響きを発生させる。時には観客の手元のコーヒーカップさえ振動して音を出す。さらに三角形の特異な空間内で音が反響し、あたかもあちこちに見えないスピーカーがあるかのよう。 

·反対に言うと、物体との共振や壁面での反響など、こうした空間を意識したアプローチをすることによって、まっさらな空間(厳密にはそのような白紙の空間は存在しないけれども)で行うソロ・インプロヴィゼーションでは生まれないような、独特のフレーズの変化や音色の使用が聴けるということでもある。 

空間と共振するサックスのソロ・インプロヴィゼーションと言えばジョン・ブッチャーが有名だが、むしろサーキュラー・ブリージングを使用しないことで呼吸のリズムをもとに演奏を構築していくという点で、空間を意識しつつも極端に音を限定する徳永将豪さんの演奏と好対照をなしているようにも感じた。 

·演奏時間が休憩なしで約90分と長めでも飽きさせないのは、一つには空間内で発生する音響現象が興味深いからでもあるけれど(この辺りはサウンドインスタレーションの体験にも近い面白さ)、もう一つは個々のフレーズの変化を必ずしも全体の時間の中に位置付けなくても楽しめるからではないかと思う。"

 

"まるで物体がアンサンブルを奏でるかのように微かな響きを発生させる"

とかこういうのを読むと興奮します。で、実際どういう風に聴こえるのだろうと確認しにいきたくなる。(松丸さんのサックス、まだ生で聴けていませんが)

 

レコードコレクターズのインタビューでも話しましたが、大谷能生さんが学生の頃に作っていた雑誌『Espresso』を中学生の時に読んだことで私は即興演奏や音響派などの音楽に興味を持ったのですが、他にもImprovised Music From Japanのwebと雑誌、雑誌ユリイカの特集=ポスト・ノイズ 越境するサウンド (2005年3月号 )杉本拓さん達が作っていたフリーペーパー『三太』、田中啓文さんのサイト

齊藤聡さんのブログ   

などを高校生の頃読み、想像を膨らませながら楽器の練習をしていました。(千葉の田舎に住んでいたのでライブは観に行けなかった)

 

中でも野々村禎彦さんの文章好きでしたね。サイトは消えてしまったのでwebarchiveからですが

[Brief Report] 木村まり来日公演より

1曲目の《Subharmonic Partita》(2004)は、彼女が開発したサブハーモニック奏法を浜松の学会で説明するための実用的小品。J.S.バッハ無伴奏パルティータ3番第1曲を弾き始め、音がG線にかかるたびにサブハーモニック奏法でグニャッと曲げる。この奏法は、初心者が弓を強く押し付けて出してしまうノイジーな音(弦の縦振動モード?)をコントロールして音階を出せるようにしたもので、最低音は通常の奏法の1オクターブ下まで伸びる。

ヴァイオリンのサブハーモニックで1オクターブ下??縦振動モード??とか

[Brief Report] 山内桂・東京圏ツアーより:ソロ@なってるハウス

だが山内は、素材としてはあえて平凡なものを選び、実音と息音の間の移行や重なりの可能性のみを探査する。実音でも息音でも、本体の鳴りとマウスピースの鳴りは異質なものであり、息のコントロールによって少なくとも(実音/息音)×(本体/マウスピース)の4通り、さらにキーの位置によっては複数の音響が同時に鳴る場合もある。実音+実音以外の「重音」は、従来は偶発的な音響とみなされてきたきらいがあり、これを系統的に精査する試みはおそらく先例がない。

サックスの音響は(実音/息音)×(本体/マウスピース)の4通り??とか興奮しませんか?

[Live Review] 大友良英New Jazz Orchestra: Europe-Japan TOUR 2005 最終公演

カヒミの儚い歌声がおのずと精妙な音色のコントロールを生み出す、というコンセプトは初演から一貫している。この曲のエンディングでは津上の息音に芳垣のブラシが重なり、ゆっくりとフェードアウトしてゆくが、アルバムでは十数秒にすぎないプロセスがこの日は数分に及んだ。楽音が遠ざかるにつれて会場の微かなノイズが立ち上がってくる、かつてのOff Siteのような親密な場以外では実現が難しいはずの状況が、立見も含めて400人近い聴衆を集めた会場で起こった。

息音とブラシなるほど...(今読み返しても色々録音のアイデアなど湧いてくる)

web-criリンク置いておくので全部読んでください。

https://web.archive.org/web/20100618025146/http://www.web-cri.com/

フリーインプロヴィゼーションは、ただ即興でガチャガチャ演奏している訳ではなく、楽曲という場では吸収しきれないアイデアを出し合えるフォーマットであり、私はそこにリスナーとしても演奏者としても魅力を感じています。で、それを言葉にしてくれる人がいて嬉しいと。

漠然としていますが2022年は普段こういった音楽を聴かない人に無理やりライブを見せて何か書いてもらう、とかもやってみたいなと考えています(これは余談でした)

 

ライブがあります。

1月5日 (水) 午後7時30分開場、8時開演
『福袋付き新春コンサート、その2』
本藤美咲 (バリトン・サックス)、山田光 (アルト・サックス)、細井徳太郎 (ギター)
2,000円 (要予約)
予約:info@ftarri.com (氏名、人数、電話番号をお知らせください)
主催:本藤美咲
来場者にはもれなく、CD / CD-R / カセット・テープが10枚入った「Ftarri 福袋 2022」を進呈いたします。新春コンサートに連日お越しのお客様には、中身の異なる福袋をお渡しいたします。
この日のお店の営業時間は、午後5時から7時30分までとなります。

Ftarri 水道橋店

本藤美咲さん、今やっているプロジェクトに参加してもらっていますが一緒に音出すのは初めてです。細井徳太郎さんにも注目していたので楽しみです。

 

私の演奏についてですが、前述の野々村さんのツイートが参考になるかもしれません(この時はめちゃめちゃ嬉しかった。)

 

 

あと最近の演奏ですが細田さんも書いてくれています。

この日の演奏は録音され、bandcampでも購入できます。ぜひ↑の言葉が大げさかどうかの聴き比べをお楽しみください。

www.ftarri.com

山田光は1988年生まれのアルト・サックス奏者で、循環呼吸や様々なプリペアドを駆使したユニークな演奏をおこなう。ほかに、サンプリングによるトラックメイクも得意とし高い評価を得る。ソロ演奏や hikaru yamada and the librarians など自身のプロジェクトばかりでなく、ほかのミュージシャンとのコラボレーションや音楽記事の執筆をおこなうなど幅広く活動している。

山田光は2021年10月4日、Ftarri に出演し、アルト・サックス・ソロと、エレクトリック・ベース奏者の阿部真武とのデュオによる即興演奏を披露。本アルバムには、ソロ1セットとデュオ2セットの合計3セット、この日の演奏すべてを収録。ノイズ要素を多く含んだ阿部のベース奏法もユニークで、全体に優れて個性的な内容となっている。

 

では良いお年を。