Looking Ahead series vol.3 坂本光太 チューバ・リサイタル

昨年末知り合った坂本さんのコンサートを観に行った。場所は神楽坂eitoeikoというギャラリー。

 

間に休憩を挟み、前半後半約40分ずつという構成 以下面白かった曲など

 

  エンカウンターズⅡ W.クラフト (1966)

最低音から高音までチューバの全音域を駆使した超絶技巧曲。天井は高いがリバーブがほとんどない空間でのチューバの響きは異様で(特に高音)壁や天井からの反射音が面白い。それと同時に建物との共鳴も多く、早くも坂本さんの音が建物の許容量を超えていることを感じる。

 

 テンション 蒋斯汀(2019)

ドローン電子音響とチューバの持続音 ドローンの雲の中でチューバの音量が増すと電子音響のほうがマスキングされていく。MAXを使ったダブ処理もあったが破裂音にエフェクトがかかるところがおもしろかった。

 

クリプト 木下正道(2013)

金管楽器は複数の音を同時に鳴らすことはできないので重音奏法は声とのハモり、そしてそのことによってかかるモジュレーションを聴かせることになる。というのは知っていたしアルベルト・マンゲルスドルフのトロンボーン演奏なんかはよくCDで聴いていたが、至近距離でチューバと声の重音を聴いたのは初めて。声のピッチも指定されているのだろうか(そして声でピッチを正確に出せないと成立しないのだろうか)。サックスで声を出すとグロウルになるしデューイレッドマンなんかはそれをやっているが金管の人と同じくらい正確にやってみるとどうなるのだろうと興味が湧いた。

 

ベルダンス 後閑綾香 (2018)

バロックダンスの松本更紗さんとの共演。バロックダンスの基本動作を解体し、その動きに合わせてチューバが息音を中心にビートを付ける趣向の曲。息音のバリエーションが振りに合わせて可視化される。めちゃくちゃ面白い!松本更紗さんの公演近々あるそうなのでそれも行ってみようかな。

 

パルティーイ短調 J.S.バッハ(1776)

フルートの曲をチューバ用に移調しての演奏。チューバとフルートは使う息の量がほぼ同じらしい(チューバは大きいカップのマウスピース、フルートは全く抵抗なく吹き込むため息が必要) 本人曰くぼろぼろだったとのことだがグッときました。私もフルートなら譜面読めるし練習してみようかな…

 

レス・アス・エクス・アンス・ビレ V.グロボカール(1973)

全然知らなかったのですがグロボカールというトロンボーンの名手が超絶難曲を残しているらしい。この曲はマウスピースに口を固定したまま、吐く息と吸う息を交互に使って休みなく演奏する曲。楽譜が二段になっていて吐きと吸いでイベントが別れて記譜されている。吹く音では口からマウスピースへの破裂音でとんでもない音量を出していた。(いつくるかわからないので何度もビクッとしてしまい恥ずかしかった)。チューバやバリサクは客席のコップを割ることも可能らしいが、ほんとにそれを体感しました。

吸う時は息音のノイズ+喉でピッチを出す、のバリエーションだが後半吐く息と吸う息で続けてロングトーンを出す場面もあり驚く。金管の仕組みわからないのですがそんなことできるんですか??

一種のゲームピースともいえる曲だがジョンゾーンに影響与えていたりはするのだろうか?曲の前に話していたが楽器内部のバルブオイルやゴミなどはとても体に有害なので手入れもしっかりしないと演奏できない曲らしい。

長時間楽器を吹き続けると口の周りの筋肉が崩れて鼻の中も痛み出し口と鼻の境が変な感触になって気持ち悪いことがあるが、演奏中その状態を自分の中でも思い出してしまった。全力を注いだ演奏でした。

 

 

現代音楽のイベントもっと行きたいが今まで情報が入ってこなかった。1つコンサート行くといっぱいチラシがもらえて気になったものもいくつかあるので今年はいくつか行ってみたい。坂本さんも他の環境でも聴いて観たい。行って良かったです!